BOX ARTとROENTGEN

20年前にリリースされた、HYDEさんの1stアルバム「ROENTGEN」のツアーが行われた今年、元々以前から好きな作品でよく聴いていたけれど、自然とこの作品に向き合う機会が多くなりました。

ご本人の新規のインタビューからはじまり、ライブ会場やインスタライブ、配信等で演奏を聴いたり、個人的には歌詞を翻訳してみたり…そしてツアーでは次なるROENTGENⅡへ向けて、新曲も4曲発表されました。
まだROENTGENⅡがどのような方向性の作品になるのか分からなかった頃に、新曲NOSTALGICがラジオで初放送となった日の緊張感やツイッターのTLの盛り上がりを、今でも新鮮な感覚で覚えています。

初めてNOSTALGICを聴いたとき、20年前から変化した歌声やどこかHYDEさんのパーソナルな部分(ふるさとの情景など)を感じさせる楽曲に、漠然と「ROENTGENの世界が開かれた…!」というイメージを感じました。そこで初めて、私は「ROENTGEN」というアルバムを、一つ一つ丁寧に箱に詰められたHYDEさんの脳内の情景をそっと外から覗き込んで眺めるようなイメージで捉えていたのだと気付きました。

ここでふと思い出されたのが、芸術家、ジョセフ・コーネルの箱の作品群です。f:id:naa666lec:20211106232331j:image(この写真はDIC川村記念美術館が送料だけで希望者に配布するという神対応企画でいただいたコーネル展の講演会記録の冊子)

数年前にDIC川村記念美術館ヴォルス展を観に行った際、初めてまともに観たいくつかのコーネルの作品は、箱の中にコーネルの写真や小物のコレクションが詰められ、小さな箱に独自の世界を形成していました。それは絵画とはまた違う、どこか孤高で不思議な魅力をもった空間に感じられました。スノードームやレジンのアクセサリーなんかもそうですが、閉じ込められた向こう側の空間というのは、なんだかときめきを増強させる要素があるように思います。

そんなことを思っていた矢先、美術の趣味を通して仲良くしていただいている方から、過去に開催された箱の作品(ボックスアート)ばかりを集めた展覧会、BOX ART展の図録をいただきました。f:id:naa666lec:20211114140434j:image
箱に何かを詰める形式の作品は、コーネルくらいしか知らなかったのですが、ここで多くの芸術家のボックスアートへの様々なアプローチや、そもそも私たちにとって「ボックス」とはどういった意味を持つのか、という概念的な部分を知ることができました。その中では、棺桶もいわゆるボックスとして捉えることができるものだということが書かれていて、ROENTGENの棺桶型シングルが真っ先に思い浮かんだ私は、あながち自分の捉えかたは間違いではないのではないか?と思ったり…。(ご本人は単なるホラー的なアイコンとして棺桶にしただけで、そんなに深い意味はないと思いますが。笑)
そして、偶然にもこの展覧会が開かれていたのは2001年から2002年。ROENTGENが制作、リリースされたのも同じ頃です。約20年前に世に放たれたものが、こうして私の中で繋がっていくというのもなんだか不思議な感覚でした。

そうしてまたしばらく経ったある日、HYDEさんのファンで、長く仲良くしていただいてるお友だちのShinjuさんという方からSHALLOW SLEEPのジャケットを再現した作品が届きました。f:id:naa666lec:20211106232625j:imageなんと偶然にも箱に入った状態のSHALLOW SLEEPです。

f:id:naa666lec:20211114160856j:image最初に届いたときに箱から出して撮った写真です。これ以来もったいなくて出せていません…


ROENTGENからボックスアートという作品の形に関心を寄せたタイミングで、箱に入ったROENTGENにまつわる作品が手元に届くとは、少し大げさかもしれませんが、輪をかけて不思議な巡り合わせだなと思ってしまいました。

ちなみにShinjuさんはこのような作品を作られています。

もはや祈りを捧げるためのお部屋のような神聖さです。(ツイートリンクしても大丈夫とのことだったのでご紹介いたします。)

 

近い未来、「ROENTGENⅡ」がリリースされたときには、こんなふうに今までの作品含め、更に何か自分の中で改めて気づくことがあるかもしれないと思うと、一層手に取るのが楽しみです。

いまは、ツアーのパンフレットのストーリーのHYDEさんのように、閉ざされた世界から抜け出しはじめたROENTGENのイメージをじっくりと噛み締めたいと思います。

UNEXPECTED 和訳

ROENTGENツアーにあたり、オリジナルの歌詞を読もうと努力したのでそのついでに英詞メインの曲を日本語に訳しました。ツアーは本日終わりますが、せっかくなのでアップします。

 

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それは不意に織り込まれた約束
思いもよらず…

時や空間を越え
道はほどける
私をあなたへ導く
思いもよらず…

月光の広場で交差し
互いの手をとった
思いもよらず…

星々の祝福の下
私たちに注がれた命
出逢いは不意に

思いもよらず…

 

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詩を読んでいて少しラルクの「永遠」の詞を彷彿とさせるなと思いました。命が注がれるという表現がとても大好きです。

WHITE SONG 和訳

今回のHYDEさんのツアーを迎えるにあたり、ROENTGENの歌詞の和訳をしてみたのでアップします。

 

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息を吸う
真新しく清らかな冬の空気を
僕は穏やかに眠る世界の夢をみている
雪は美しく降りそそぎ
冬の深い魅力に歓ぶ
待ちきれない
待ちきれないよ

凍てつく空気
人々は集い火を囲む
僕は寒さがもたらす温もりを感じる
霜が覆う木々の頂は輝き
今宵銀色に煌めくだろう
待ちきれない
待ちきれないよ

僕らに雪が降りそそぎますように
あらゆる場所、世界中が白のベールに包まれる
季節を渡るため僕はまっさらに戻る
もう一度

絶えず雪が降り積もる
それはまるで天のダイヤモンドのよう

壊れた心へ降り注いだなら
遥かな季節も渡っていける!

僕らに雪が降りそそぎますように
あらゆる場所、世界中が白のベールに包まれる
季節を渡るため僕はまっさらに戻る
もう一度 もう一度
季節を渡るため
もう一度

 

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“to face the seasons”は季節に立ち向かうためという意味ですが、日本語部分に合わせて季節を渡るという表現にしてみました。

「人々が寄り添う温かさ」とか「冬を迎えてリセットする」という部分なんかは、インタビューや富良野のディナーショーでお話されている冬の魅力がそのまま歌詞に詰め込まれていますね。

いつもライブでは、出だしの「breathe」の破裂音に冬の空気が吹き抜ける様を感じながら聴いています。

OASIS 和訳

今回のHYDEさんのツアーを迎えるにあたり、ROENTGENの歌詞の和訳をしてみたのでアップします。

 

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延々とうねる砂漠の道は
僕を衰弱させていく 出口は無い

乾いた風
燃える太陽
燃え尽きたエンジンを投げ捨てた

何もない世界で
どこへ行けばいいのか?
強い目眩
蛇の毒
僕をダウンさせる

体温は上昇する
踊る死神が僕の周りに
月と太陽はいたちごっこ
手招くオアシスは遥か地平線の向こう
蜃気楼かどうか?
目眩を感じ
魅了される

最後の煙草に火をつける
運命の分かれ道
あの場所へ行くべきか?
それとも引き返すべきだろうか?

答えもない
体温は上昇する
踊る死神が僕の周りをまわる
月と太陽はいたちごっこ
手招くオアシスは遥か地平線の向こう
蜃気楼かどうか?
目眩を感じ
魅了される

目眩に抱かれ 終わりなく
破壊と創造がいたちごっこ
手招くオアシスは遥か地平線の向こう
蜃気楼かどうか?
目眩を感じ
魅了されていく

 

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蛇の毒に侵されてしまった歌詞の主人公は、もしかしたら命を落とすことで自分自身を衰弱させていく砂漠の世界から解放されて自由を手にできるのではないか?それとも死んでしまえばいよいよその光景から永遠に抜けられなくなってしまうのか…今回の演奏では、朦朧とした意識の中で不思議な力に魅了されていく様をありありと感じました。

 

A DROP OF COLOUR 和訳

今回のHYDEさんのツアーを迎えるにあたり、ROENTGENの歌詞の和訳をしてみたのでアップします。

 

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移り変わりゆくこの時代を混乱が支配する
そして騒音がこの街を満たしてゆく
あなたを想いながら私はその騒音に溺れる

どうしてあなたに分かるだろう?
私を知る必要があるのでしょうか?

あなたは私の乾いた肌を優しく豊かにする
一雫の色彩が、日々直面する運命から私を救う
雪の吹き寄せを貫く一輪の花のように

春のそよ風はなんて優しく歌うのでしょう
遥かな山の息吹きはなんて深いのでしょう
あなたに見せたいものがたくさんあるの

あぁ、なぜ憎しみはさらなる憎しみを生むのでしょう?
長く見捨てられた果実は腐敗を早めていく
この国は飢え、心さえも無い

春のそよ風はなんて優しく歌うのでしょう
遥かな山の息吹きはなんて深いのでしょう
あなたに見せたいものがたくさんあるの

春のそよ風はなんて優しく歌うのでしょう
遥かな山の息吹きはなんて深いのでしょう
あなたに見せたいものがたくさんあるの
いつの日か
春のそよ風はなんて優しく歌うのでしょう
遥かな山の息吹きはなんて深いのでしょう
あなたに見せたいものがたくさんあるの

 

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今回のツアーがあるまで映画「化粧師」のタイアップがついていた曲だということを知りませんでした。映画自体は見られていないのですが、あらすじを読んでA DROP OF COLOURというタイトルである意味がより深く分かったような気がします。

NEW DAYS DAWN 和訳

今回のHYDEさんのツアーを迎えるにあたり、ROENTGENの歌詞の和訳をしてみたのでアップします。

 

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君は真実を本当に知っているかい?
真実はただ一つだけ
もし君が死んだとしても 手がかりさえ掴めない
君の隣にいる男
彼は真実を知っているかも知れない
もしくは真実なんて存在していないのかも

闇が光を抱くとき、なぜ光に祈るのだろうか

偽りが君を取り囲む
それはあらゆる面を持つ
それでも君はその真実に背を向ける
深く根を張った歴史
狡賢く仕込まれた嘘たち
誰も逃げられない 逃げようともしない

闇が光を抱くとき、なぜ光に祈るのだろうか

夜が明ける ゲームを始めよう
勝者は讃えられる
さぁ、ゲームを始めよう
君の番だ

君の答えを言ってごらん
賽は投げられた
後戻りはできない
君の答えは?
賽は投げられた
偽りの「神の御加護を」

夜が明ける ゲームを始めよう
勝者は讃えられる
さぁ、ゲームを始めよう
君の番だ

 

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この曲を聴くとなぜかマグリットなどのシュルレアリスムの絵画が頭の中に浮かびます。捉えようのない真実が描かれている部分が重なって感じられるのかも知れません。

 

THE CAPE OF STORMS 和訳

今回のHYDEさんのツアーを迎えるにあたり、ROENTGENの歌詞の和訳をしてみたのでアップします。

 

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何処を航海すればいいのか?
船はコントロールを失った
飲み込んだ私の涙、荒れ狂う海に彷徨う

私の愛は何処へ?
私は辿り着ける?
嵐の岬が私の中の痛みを響き渡らせる

あなたはきっと気づかない
罪の色彩
嵐の暗雲がかかり
闇が訪れる

暗闇が私を追い詰める
この星の果てで
包み込まれてしまうまで

幽霊船は遠く彷徨う
導く星もないのに
この財宝たちも今となっては何の意味もない

何処を航海すればいいのか?
船はコントロールを失った
飲み込んだ私の涙、荒れ狂う海に彷徨う

私の愛は何処へ?
私は辿り着ける?
嵐の岬が私の中の痛みを響き渡らせる

あなたはもう知っている
この罪の味
まるでチョコレートのように
口の中でとろけ

一時の喜びに
あなたは満たされる
けれどすべての夢は時が来れば死にゆく

幽霊船は遠く彷徨う
導く星もないのに
この財宝たちも今となっては何の意味もない

これが運命なのだろうか

何処を航海すればいいのか?
船はコントロールを失った
飲み込んだ私の涙、荒れ狂う海に彷徨う

私の愛は何処へ?
私は辿り着ける?
嵐の岬が私の中の痛みを響き渡せる

 

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歌詞を読まずとも荒れ狂う海の様子がイメージできるような音ですが、こうして改めて読むとその中にある切なさなんかも感じ取れます。

ステージで風を受けて衣装をなびかせながら歌うHYDEさんは、HYDEさんの憧れの人であるサモトラケのニケに勝るとも劣らない美しさでした。